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UNITY!の活動は1999年、AVACO小川清司記念・視聴覚教育奨励賞を受賞いたしました。

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UNITY!ソングス・シークレットストーリー/Track1


『オーヴァーチュア:"Access To The Lord"』

 

作曲: Peter宮崎 道  ('98)

(Including「たたえよ主を」作曲:柴田 義)

 

 

初演

 

Elpis/バンド版:

11月29日(日):Elpisクリスマス・コンサート・ツアー'98 /CD『UNITY!』発売直前プレ・ライヴ
(於・名古屋 日本福音ルーテル恵教会)

 

 

ご注意:

QuickTime、XG MIDI Plug等のGMソフトシンセ・プラグインをお持ちの方には、現在「オーヴァーチュア:“Access To The Lord”」の“お手軽バージョン”をお聞きいただいております。このデータを作曲者、データ作成者、著作権管理者への承諾なしに他のサイト等に転用したりすることは堅くお断りさせて頂きます。尚、楽曲は著作権登録済みであり、JASRAC(日本著作権協会)の管理下にあり、法の下に守られております。

 

 


 

【シークレット・ストーリー】

Written by うしマ〜ク!(Peter宮崎 道)

 

 

 

 この曲はCD収録曲の中で最後に書き上げたものです。1998年6月19日に着手し、6月20日に楽曲を完成させました。

 


 

【作曲意図】

 この曲はCDのオープニングを飾るナンバーとして、CD収録曲の曲目リストを作成する以前から構想だけは存在していました。DD(戸川光)氏が作成した“MCDプロジェクト・デモ集Vol.3”(「UNITY!」のためのデモ演奏を収めたシリーズの第3作目)には、第一曲目の「パラダイス」に至る前に「イントロ」という短い曲が置かれており、オルゴールが奏でる静かな短いテーマの後にモデムの音が挿入され、それにオーバーラップして都会のざわめきと共に「パラダイス」がはじまるという展開が非常に素晴らしいものだったかったからです。そのニュアンスを生かし、アルバムのメッセージを込め、更にイメージを広げたのがこの曲です。

“MCDプロジェクト・デモ集Vol.3”

 

 タイトルは、ある方から、作品の意図的には「Access The Lord」(主へアクセス)が適切ではないかとのご指摘がございましたが、敢えてインターネット的な感触の“The Lordへ接続する”と、キリスト教的な“天国への扉”というようなダブルミーニングにより、「Access To The Lord」としたのです。

 


 

【楽曲解析】

 曲は4パートに分割できます。しかもそれぞれに意味があります。簡単にご説明致しましょう。

 

Part 1: 「Handshake Tone(Connect To Heaven)」
Part 2: 「Kaos 1(Access To The Lord)」
Part 3: 「Song of Praise(たたえよ主を)」
Part 4: 「Kaos 2」

《Part1: Handshake Tone(Connect To Heaven)》

 無調的な現代音楽風のこのパートの冒頭は、モデムの発する音を模倣したものです。「Access To The Lord」(主へ近づくための道)とは、この場合はサイバースペース(インターネット等)へのアクセス(接続)にその具体的イメージを求めています。更に『UNITY!』がサイバースペースの交わりから産まれた事を主張する意味あいも兼ねています。

 さて、場面としてはログインしたところで、ハイトーンのオーボエ風サウンドの短い旋律にポジティヴオルガンのハーモニーによって、それまでの無調的なニュアンスが一掃され、トーナリティ(調性)が現れます。ハーモニーを奏でる楽器に、敢えてオルガン・サウンドを用い、フランス近代風のハーモニーを付加したのは、キリスト教会的なニュアンスを表現したかっためです。

 続いてクワイアー・サウンドによるトーン・クラスター的なサウンドがフェードインすると、コンピューター(この場合はMacintoshのスピーチマネージャーを使用)の合成声による“Access To The Lord”というアナウンスで、イメージは“サイバースペースの情報の渦”へと入っていきます。

 

《Part2 : Kaos 1(Access To The Lord)》

 打楽器によるパルスが刻まれ、一気にプログレッシヴロックな「パート2」と流れ込んでいきます。調性はニ短調です。このパートでは2/4+3/8の、全体としては7/8拍子のパターンを作り、混沌とした「情報の世界」へ渦を巻くように突入していく様を描いています。いわば信号の流れる様子です。これは後で分かったことですが、このパートの冒頭のパルスは、モールス信号でいう「笑い/喜び」を表すものだそうです。

 

《Part3 : Song of Praise(たたえよ主を)》

 7/8拍子の嵐が一旦、ポジティヴ・オルガンと電話のプッシュ音のリズムで落ちつき、イ長調に転調して「パート3」が始まります。このパートではアルバムテーマである「たたえよ主を」が登場しますが、その間に4度下に転調しています。転調のブリッジ部分は、ミニマル・ミュージックの第一人者=テリー・ライリーの『ア・レインボー・イン・カーヴド・エア』を少なからずイメージしていたことは内輪のみの内緒の話でした。

 ここで男声のハミングで歌われるのはCDテーマ曲であり、最後のナンバー「たたえよ主を」のサビの部分です。この展開が、この曲が「序曲(オーヴァーチュア)」たる所以です。そしてそのバックには「パート2」で登場したパルス(喜び)が再び登場、ゆったりとした歌の旋律、厳かなハモンド・オルガン(電気オルガン)に対して16分音符の“チル・アウト”を配しています。このパートは「主」に出会うその瞬間を表現しています。

 

《Part4 : Kaos 2》

 そして突然転調し、ニ短調の「パート2」のパターンが再現される「パート4」になります。更に曲の調性はヘ短調へと転調し、突然終わります。

 


 

【録音作業に関して】

 これはアルバム中、純粋に私個人の音世界であります。又、唯一のインストゥルメンタル曲でもあり、録音には大変な集中力と時間を要しました。実作業的には2週間かかりっきりでした。それには訳があります。

 アルバムの他の楽曲はシークェンサーで一斉に演奏したシンセサイザー・オーケストラの音をYAMAHAのデジタルミキサー=Pro-Mix01で2chステレオにまとめた“完パケ・オケ”を、一旦ROLANDのハードディスク・レコーダー=VS-880に入れ込み、そこへ後に歌や生楽器などをオーバーダビングしていったのですが、この曲では全く違った方法をとりました。

 VS-880にまずドラムスのパートをバラで入れ込みし、スネアドラムには“ギターアンプ・シミュレーター”で音を歪ませ、全体のバランスをとってドラムスのみを2chにまとめる作業から始めました。続いてベース+ギターぬきのオケを仕込み、その後にベース、ギターを録音していきました。これらは全てシンセサイザーによるものです。

 

 これらを一旦2chにミックスダウンし、大まかなバックグラウンド・オケを完成させました。それに対し、「パート1」の2本のクラリネット・パートにとりかかりました。AKAI CD3000(サンプリング・シンセサイザー)から出したブライトな音色のサンプリング・クラリネットのサウンドを、古いアナログ・システム・シンセ=EMS AKS(SINTHI A)のインプットに(オーディオ・ソースとして)入力し、内蔵のフィルター・モジュール(VCF)で音色変化をマニュアル・コントロールでつけて録音しました。フィルターモジュールとは、いわばオーディオアンプについている「トーン・コントロール」の強力なヤツだと思って下さい。

 続いて男声のハミングを自ら歌って録音。ダビング回数は全7回です。人数的には下4人、上3人という勘定です。そして最後にEMS AKSを使って、左右に飛び交う電子音/ノイズを録音。方法としてはフランスのシンセサイザー奏者=ジャン・ミッシェル・ジャールのそれを手本にしています。全体の最終作業は、Macintoshのスピーチ・マネージャーで喋らせたデジタルボイスのナレーションを取り込む事でした。

 


 

【初演】

← ルーテル恵教会にて。

  初演の風景 (11/29.1998)

 

 この曲の初演はCD『UNITY!』発売前、Elpisの「ヤァ!クリスマスコンサートツアー'98」の11/29(初日公演)、名古屋の日本福音ルーテル恵教会で、木管を含むバンドバージョンで演奏しました。この曲に関してのみ、関係者以外には誰も聞かせていなかったこともあり、このライヴ演奏が楽曲にとって初めての「お披露目」となりました。演奏はもとより、完全なMIDIデータ化さえ困難なこの曲は、初演時には必要なバックオケに、CD用のレコーディング・オケをMDにミックスダウンしたものを使用していましたが、それ以降の演奏の際には私が自ら完全なるMIDIデータ化したものをバックオケに使い、その上にフルート、オーボエ、キーボード、パーカションをプラスしていく方法をとっています。

 

日本聖公会・東京聖三一教会 →

「AVACO・視聴覚教育奨励賞受賞記念Elpis Live」  

 

 


 

【まとめ】

 この曲では先にも述べましたように、デジタル・サンプラーのクラリネットをアナログ・シンセのVCFでフィルタリングするなど、“アナ・デジ”によって「演奏」に息吹きをもたらしました。デジタルのクリアーなサウンドとアナログのしなやかさを上手く合わせ、この曲は1990年代ロックシーンらしい“古いけれど新しい”サウンドを目指しています。

 「電子音」にはほとんど全て懐かしい「アナログ・シンセ」を用いています。電圧が急激に上がるような低音のスイープ・ドローンにはFender CHROMA Polaris IIを用い、MIDIで「演奏」として奏でています。EMS AKSは強力にモジュレーションされたノイズ的な上昇/下降サウンド(本体内蔵のジョイスティックにてマニュアル演奏)を用いています。これらは全て演奏の一部です。

 無調性、トーンクラスター、プログレッシヴ・ロック、デジタル・ロック、激しいノイズ・サウンド、そして肉声による「たたえよ主よ」の旋律、全てが1曲に収まったこのナンバーにより、アルバムは幕を開けます。アルバムの17曲全てが一つのカテゴリーに捕らわれず、様々な音楽的要素が集結していることをシンボライズしているのが、このナンバーです。

 


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