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UNITY!の活動は1999年、AVACO小川清司記念・視聴覚教育奨励賞を受賞いたしました。

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プロダクションノーツ: プロデュース編 #3 
 

【最初の録音へ】

 1997年3月、私は急遽、東京・品川区へ引っ越すことになり、3〜4月初旬は結果的にはスタジオ移転/再建のためCDの作業はストップせざるを得ませんでした。ですが、何か始めないと何も始まらないと思い、4月29日、CD用の録音としてまず手始めに同じ東京在住のP&J氏と相談し、氏の作品「賛美の声がする」の録音に踏切ることにしました。この時、氏はMCDプロジェクトに対しても積極的に関われなくなるほど、かなりお疲れの様子でした。氏を励まして共にCD製作へ向けて志気を高めよう、という個人的な目論見はあったことは事実です。

 

 その録音を控えた4月半ば頃、ZEDEK氏と2度目の会合をもちます。氏は品川に移転した私のスタジオへ出向いていらして、そこでその時点ではまだ歌が入っていなかった氏の演歌賛美「十字架の愛」の歌入りのデモテープを録音しました。氏が自ら“演歌歌手になりきって”歌ったこのテイクの録音は、デモテープなのだからムードを大事に、という主旨のもとに行っただけなのですが、笑いをこらえつつ行ったモノでした。この時、私にはまだ録音用のマイクロフォンを持っておらず、唯一所有していた大変古く小さいアナウンス用マイクを録音に使いました。その音はどうしようもなくコモった細い音でしたが、録音に使用したハードディスクレコーダー=ROLAND VS-880に内蔵されていた“マイク・シミュレーター”エフェクトで見事クォリティ・アップに成功しました。この曲はVS-880に対しても良いオーディションにもなったのでした。このテイクに私はボコーダー(人声シンセサイザー)でコーラスをつけ、この曲の正式なデモテイクを初めて完成させました。

 


【賛美の声がする・録音オフ('97.4/28)

 「賛美の声がする」をCD用の録音として最初にしようと思い立ったのは、このCD企画の発案者であるジェネラルプロデューサー=Morrow氏が、この曲がきっかけでこのアイディアを思いついたということもあって、この「賛美の声がする」から録音作業を開始する、というのは記念的な意味のある事だとも思いました。又、“全て生演奏”のため、私自身でバックオケの作成などの下準備を全く必要としないという事も大きな事でした。そして録音をするに当たり、事前に“録音オフ会”と名打って有志を募り、その日の午後から東京・府中市の日本聖公会・聖マルコ教会(司祭:パウロ宮崎 光)にて録音を遂行しました。共同の録音エンジニアには私の率いるバンド=Elpisのメンバーであり、同時にFLORDメンバーでもあるDD氏にお願いしました。DD氏はその後、自らの所有する録音機材を貸し出して下さるなど、CD製作に深く関わっていきます。

 

 この録音は下準備のまったくないまま突入したため、誰かがアイディアが出せばそれを出来る限り生かすために皆で考える、かなりハプニング性を生かした方法で進行していきました。歌の合間に入る「合いの手」などは、その場に居合わせた有志の皆で作ったものです。即席でハモリのパートを作ったり、大変楽しい録音となりました。

 

 それと平行し、私はミネストローネさんと共にP&J氏の「こころのとびらをひらくと《P&J版》」を試験的に録音してみました。私が練り上げたMIDIデータのバッキングの上でミネストローネさんが歌ったものですが、彼女は私のスタジオにあった布団の中(!!)に潜って歌いました。この時のテイクが後に、最終的にCDに収録されたテイクになります。

 


【「たたえよ主を」の完成 】

 その後日、三度上京されたZEDEK氏は新曲が入った一枚のMDを持ってやってきました。その曲は私と氏が病院で初めて顔合わせした時に語り合った“UNITY!テーマソング”として作った「たたえよ主を」でした。6分ほどの長尺のこの曲は、最初に聞いた時は素晴らしい旋律を持っていたものの、間延びしていて上手く盛り上がらない割にはやけに饒舌な作品だと感じました。なんか退屈な曲だなぁと。氏はこの曲を“We Are The World”みたいに大勢の人達が1節ずつ歌い次いでいくんだと言い、この曲はCDのエンディングに持っていって欲しいと私に語って下さいましたが、そのためにはこの間延びした退屈感を取り除くために楽曲を解体し、アナリーゼ(楽曲解析)した上で再構成・リアレンジする事が必要となりました。しかしこの時点ではこの曲に着手はしませんでした。

 


【MCDデモテープ第3弾の配布】

 同年5月、これらの録音を含むデモテープ第3弾がDD氏の手により編集されました。この時点で既にデモテープ第1弾、第2弾に触発されのたか、かなりの数の楽曲が提供されており、それまで会議室でのみの発言でプロジェクトに参加していた奈良在住のパンくず氏の「パラダイス」、「主イエスのささやきを」、「空の鳥よ野の花よ」、ZEDEK氏の「十字架の愛」、「たたえよ主を」、「わたしはここにいる」、九州の高校生=マン太郎くんの「あなたばかりの」、P&J氏の「こころのとびらをひらくと《P&J版》」等、CDに収められた作品の多くのオリジナル・デモ演奏がこのテープに収録されています。又、石川県在住のFLORDメンバー=ごとぴい氏の素朴な美しさを持った宝石のような小品も2曲収められました。数ある中から厳選された感のある第3弾はほとんどの音源がカセットテープで渡されたものであったにも関わらず、DD氏独自のマスタリング・エンジニアリングと、A面が「アコースティック・サイド」、B面が「エレクトリック・サイド」と分けられたコンセプチュアルな構成により、“これがCDになるんですね?一層MCDが楽しみです”という誤認発言まで飛び出るほど充実したものに仕上がりました。DD氏のマスタリングに感銘を受けた私は、直後に氏をCD用マスタリング・エンジニアをやって頂くようお願いしました。

 


【製作パートナー探し・売り込み】

 デモテープ第3弾の配布と前後して、Morrow氏はカトリック出版社の「女子パウロ会」のシスター白井に単独でコンタクトをとり、ゴールデンウィーク休暇中を利用して上京、5月4日に女子パウロ会への売り込みを試みました。コーディネイトはカトリック信徒の東京のボリロン氏が行い、この時たまたま仕事で上京してらしたZEDEK氏も合流して私達4名はシスターとお会いしました。

 私とMorrow氏はその直前、喫茶店でお茶を飲みながら、私がMDにダビングしてきた楽曲デモを共に聞き、プレゼンテーションのための曲順を検討したりしました。そしてそのMDをシスターに聞いて頂いたところ、シスターはこの企画に大変興味を示しては下さいましたが、女子パウロ会ではCD制作部が1998年秋頃まで閉鎖中で、CD製作は行わないという話を聞き、営業グループとしては「そこまで時間はかからないだろうから....」と断念せざるを得ず、残念な結果に終わりました。

 しかしシスターは「サンパウロに行ってブラザー阿部にお会いしなさい。ブラザーは必ず良いアドバイスをして下さいますよ。」と最後につけ加え、私達を励まして下さいました。

 


【The Walls Invisibly・見えない壁】

 さて、女子パウロ会への営業が成功せず、その結果をFLORDの会議室に私は“報告”として書き込みをしました。しかしこの結果についてではなく、この行動自体が思わぬ波紋を呼んでしまったのです。私はmailにて数人の方々が「自分の教会はカトリックと反目した立場にあるためにこれでは自分の兄弟姉妹に薦められない」、「販売に協力できない」、「これでは教会から破門されてしまうのでこの方向ならば製作グループに居られない」といった辛い思いを苦しみつつ伝えて下さったのです。現代キリスト教で教派間を越えた交わりとして「エキュメニカル」(教会一致)という動きがあり、私はそれを歓迎している1人ですが、それが単純な感情だけでは出来ない立場(教会)の人達も居る事を知らされ、それがこの「賛美のCD」にまで関わってくるほどのものであることは、「エキュメニカル」が大変困難で、非常に根深い問題に触れている事を覚えました。

 

 このような「見えない壁」は製作過程で至る所に存在していました。それを打破したり乗り越えたりする唯一の方法は、自分たちが“自分の足で立つ”ことしかなかったのです。自分の力でまずは自分を立たせることから始めないと、このCD製作のスタッフという小さな世界でさえ「エキュメニカル」は実現しなかったからです。そして成りゆきとして、CDは販売ルートを予め確保はせず自主制作、献金&前金払いによる事前金で自費出版、という形で進められることになりました。どこの教派の出版社に属さず、独立した立場で販売していこうと考えたのです。

 しかしMorrow氏はそれを受け入れながらも、決して販売ルートや製作パートナーとしての出版社へのアプローチから手を休める事はしませんでした。氏はジェネラル・プロデューサーとしても個人の強い思いとしても、このCDをFLORDに関わらないキリスト教会の兄弟姉妹、更には未信者の一般リスナーにまで広く知らしめたいと願っていました。それ故、全国的に販売ルートを持つ会社とのパートナー・シップは必須だと考えていたのです。

 


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