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UNITY!の活動は1999年、AVACO小川清司記念・視聴覚教育奨励賞を受賞いたしました。

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プロダクションノーツ: プロデュース編 #6 
 

【録音オフ再開・関東合唱録音オフ】

 1998年に入り、東京在住の軍曹(冠野広一)氏より「例の録音オフ、ウチの教会でやったらどうかな?」というお誘いを頂き、氏の主催という形で2週間に渡り全2日の録音オフ会を救世軍渋谷小隊にて企画しました。総勢10名ほどの人が集まり、「たたえよ主を」のコーラス部分の録音を徹底して行いました。マイクは一本だけ立て、その前にかなり近接で全員が並び、3声部あるコーラスを1パートずつ丁寧に録音しました。近接したため声がハッキリ録れ、又少人数だったこともあって全員の声がキチンと揃っており、六甲山で録音したテイクと合わせて再生した時のそのサウンドにはある程度は満足しました。しかし男声ばかりが(人数的にも多かったので)目立っていて、女声がやたら薄かったことです。次なる課題は、女声を増やすこと、でした。

  


【スタッフの不安と懸念】

 この頃に、一部の製作スタッフには“一体いつ完成するんだろうか?”という懸念が生まれてきました。事実、名古屋の伊藤康宏氏のもとには「前金予約したあのCDはいつ頃出来るのでしょうか?」という問い合わせが数件あったのです。前金予約開始とMCD基金設立が早すぎたのではないだろうか、もっと時間的余裕をもってアピールをはじめたほうが良かったのではないか?......様々な不安がスタッフを襲いました。

 とにかく早く、出来ている音源だけをミックスしてCDを完成させたとして発売してしまうか、それとも前金予約者に陳謝してプロジェクトを閉鎖し全額返金するか、などというトンデモナイ意見も会議室上で飛び交いました。ジェネラルプロデューサーのMorrow氏もこういった討議に関して困惑し、疲れはててしまい、更に自らが音楽製作に関してはまるっきり素人であるという事から“本当にCDとして完成出来るんだろうか?私はこういう時に何が出来るのだろうか?”と悩み初めてしまいました。Morrow氏のアタマの中には、FLORD企画の第一弾として既に発売された「カルルさんの贈り物」(通称:“カルル本”)がぐるぐる回っていたようです。

 “カルル本”は、FLORDメンバーとして活躍し、大勢の悩める方々に救いをもたらし若くして天に召されたカルル氏(注:私がFLORDメンバーになった時点で既に他界なさっていた)と、当時のFLORDメンバーとの会議室上での対話を中心に公にまとめた、純粋なるFLORDメンバーの全手作業による書籍です。この本の製作チームには'97年5月4日に女子パウロ会のシスター白井へのコンタクトを請け負って下さったボリロン氏がおり、MCDプロジェクトがスタートする際にはボリロン氏を始め“カルル本”製作チームの方々から多くのアドバイスを頂いていました。Morrow氏は“カルル本”の製作と『UNITY!』の製作の進行具合があまりに違うことに戸惑っておられた様子です。

 

何故こんなに時間がかかるのだろうか......?

 

 当惑するMorrow氏と私はその頃、mailにて頻繁に話し合いました。そして会議室上で飛び交っている負の意見に惑わされず、それを打ち消すような発言をしていく方向で合意しました。その翌日から、私達CDスタッフ責任者は「必ず完成させる!」と強く言い放ち、不安と懸念が錯綜する会議室をなだめていったのです。そしてスタジオにも出入りする作曲家として私は、これだけは述べておかねばなりませんでした。

「書籍の製作と音楽CDの製作は根本的に作業が違うことを心に留めておいて頂きたい。たった1曲を仕上げるだけでも、大変な時間と労力が必要なのです。ことに録音に至っては必要なスタッフ/演奏家が物理的に同じ時間と空間に居合わせなければなりません。毎度その繰り返しであるCD製作に於いて、諸々の自費出版可能な物品と同じ感覚で出来るもんだとお思いの方は認識を改めて下さい。事実、皆さんが手にしている多くのクラシック/ポピュラー/ジャズのCDも、それぞれに大勢の演奏家が一カ所に集い、長い時間をかけて録音し、その後に製作スタッフは各分野別に分業しているとはいえ、ほぼ24時間不眠不休で作業した末に作られたものなのです。1枚のCDを手に取るとき、それを聞くとき、その製作過程に思いを馳せて頂きたいと思います。」

 

 この一件は『UNITY』の製作に関わる人達にとって、「音楽」という、その一端を見ることも触ることも出来ない不可思議ながら身近な“怪物”に、初めて接することができた瞬間だったと思います。

 


【『UNITY!』の音楽はエモーショナル主義】

 ここで私は、よく言われる“アマチュアの利点”をこのCDに生かす事を決意しました。プロというのは時間に制限のある「仕事」ですので、確かに作業は大変早く済みますが、早い分、理想的なサウンドを得ることは時に難しく、それを得るには逆にスタジオ代、スタッフやミュージシャンの拘束料など、大変な労力とお金もかかってしまいます。しかしアマチュアの録音の場合はプロほど時間に制限がないため、コツコツとじっくりと時間をかけて理想に近づける事は出来ます(技術的な問題はおいといて)

 

 更にプロは演奏に関して力まずに肩の力を抜いて演奏することが第一ですが、アマチュアは演奏することに懸命になってしまいます。この結果、演奏には“余分な力加減”が如実に表れてしまうのが大方のアマチュア・ミュージシャンのウィークポイントです。が、逆にそこには“懸命にやっている”姿も収録され、それが強いエモーションのうねりとなってリスナーに伝わることもあります。歌でも、音程がハズれていてもそれにダメだししてやり直しを繰り返せば、音程にばかり気を取られてエモーショナルな演奏ではなくなっていきます。このCDはそういった演奏技術云々より演奏者のエモーションを捕らえ、楽曲と演奏家が一丸となってメッセージを伝えること、それこそがこのCDの持つ“パワー”となるのです。

 既にこの時、企画立案から既に1年半を経過していたこのプロジェクトは確かに会議室上で討議されたように“時間のかけすぎ”と言えなくもなかったのですが、それでも理想に近づけるために労力だけは惜しまなければ“オリジナル”なものを作り出す事が出来る、そう確信したのです。そしてその行程を思いっきり羽根を伸ばして喜び楽しむこと、それがアマチュアだけが持ち得、プロがそれを取り戻すために腐心する何かであると私はこの期に及んで知ったのです。

 


【「あの日のこと」/“サウンド=ブリティッシュ”】

 同年2月、出張のために上京したMorrow氏と再会し、少々の時間でしたがスタジオで最終打ち合わせをしました。その折り、氏から手渡された2本のテープの中に、神戸在住のFLORDメンバー=あいかさんの友人がご夫婦で歌っている、という曲がありました。それはカセットデッキを回しっぱなしにしてギターと歌で収録した非常に素朴ながら美しい曲でした。それが福山芳明氏が作られ、夫人の福山ひろみさんが歌った「あの日のこと」でした。

 

 私はこれを直ぐにダビングし、またもやたまたま上京していたZEDEK氏と再会した折り「これを素材にZEDEK流に料理してみない?」と気軽にお願いしてみましたところ、氏は快く了承して下さり、その場でテープを渡しました。その際、ZEDEK氏と私はCDのトータル的なサウンドについて短い時間でしたが討議しました。

 アルバムで他者の楽曲のアレンジを主だって請け負っているのは私、ZEDEK氏、パンくず氏の3名で、この3名に共通する趣味趣向を考えてみたところ、共通項として2点が挙がりました。

 

共通項1:「ブリティッシュ・ロックが好き」
 

 これはビートルズ、クィーン等を筆頭とする英国製のポップス/ロック・ミュージックのサウンドを示しています。同時に英国から沸き上がったインテリ・ロックである“プログレッシヴ・ロック”(プログレ)も含んでいます。どこか湿ったような幻想的なサウンド、楽曲の様式的な美しさ、大聖堂的な音空間感覚を持ったものです。

 

 

共通項2:「デヴィッド・フォスターが好き」
 

 デヴィッド・フォスターはカナダの超大物プロデューサー/ソングライター/キーボーディストです。70年代中盤にアメリカ・ウェストコーストのスタジオシーンから頭角を現したD.フォスターは“フォスター・サウンド”といえる明瞭で聞き心地の良い独特のアメリカン・サウンドを作り上げ、世界的にもポピュラー・ミュージックでは既に80年代中盤から定番化しています。彼の音楽はガッチリとした構成を持ち、クラシカルなハーモニー感の上にポピュラリティ溢れるメロディーを乗せ、アメリカらしいサウンドで味付けしています。

 フォスターサウンドは耳障りの良さのためか至る所に応用されて顔を出し、“Maranatha! Music”等アメリカのクリスチャン・ミュージックの定番サウンドとして定着した感じもあります。

 

 

 この2点は、それまでにアレンジが完成している作品を聞いても、大方に当てはまるモノでした。が、『UNITY!』は特にこれまで日本のクリスチャン・ミュージックには見られないブリティッシュ系サウンドにしようではないか、それによって商品の差別化を計り、それをオリジナリティとしようではないか....と話し合い、「トータルサウンドコンセプトはブリティッシュ系でいこう」と勝手に決議しました。それに基づいてZEDEK氏は「あの日のこと」に取り組んだのです。

 山形に戻ったZEDEK氏は約1週間でを完成し、そのMIDIデータをmailにて送って下さいました。単に「編曲」という範疇を超え、氏の大胆な補作により壮大なドラマを感じさせる作品に生まれ変わった「あの日のこと」に、私は大変感動したものです。

 


【関西レコーディング行脚パート2】

 

 さて、3月末、急遽パンくず氏の呼びかけにより、関西レコーディング・パート2が企画されました。今度は録音のためだけの旅であったので、KENNEL氏他のプロジェクト・スタッフの方から交通費を支給して頂き(そして私は仕事を中断して)それが実現しました。この時の資金は通称「MCD基金」から運営・管理担当のKENNEL氏の許可により“製作必要経費”として頂いたのです。

 

 パンくず氏はこの録音のため、教会同士の賛美交流や賛美大会などで知り合った斎藤洋三氏と谷渕和子さんとコンタクトをとりCDレコーディングに参加を要請、両氏は快く引き受けて下さいました。又、この時にご自身も素晴らしい作曲の才能を持つ斎藤洋三氏の「もう踊らずにはいられない」をパンくず氏は取り上げたいと申し出、アレンジして自ら歌ったデモテープを私の元へ送って下さいました。パンくず氏は“アルバムの中に元気の良い曲が足りないでしょ”と言っていましたが、私はそれを聞き、楽曲の良さと抜群のアレンジ・センスによる“はじける感じ”に圧倒され、即座にこれを録音することを決定しました。

 谷渕和子さんについては'97年夏、六甲山オフの後にパンくず氏の「なのはな工房」で泊まり掛けでPSALMの録音を行った際、関西で行われた賛美大会のビデオで確認済みでした。Jazzyな、けだるいボーカルは素晴らしいの一言に尽きました。パンくず氏も谷渕さんとのジョイントを心から願っていたこともあり、氏にとってはこのレコーディングで擬似的に「共演」出来るということに大変喜んでおりました。

 

 大阪在住のFLORDメンバー=LIKELUKE氏のコーディネイトの下、日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド高槻教会のKEIRO氏(藤井敬郎・牧師)のご厚意により、その教会の聖堂にて録音をすることとなりました。ここで収録したナンバーはパンくず氏自身が一度歌い、自ら破棄を申し出た「パラダイス」、同氏の感動のバラード「Tell Me The Way」、それになべQ氏が提出して下さった素晴らしい「タリタ・クミ(少女よ起きなさい)、そして斎藤氏の作品をパンくず氏が大胆にアレンジし、正に踊り出すようなグルーヴィングを持たせた「もう踊らずにはいられない」、更にFLORDメンバーのミルトス氏のボーカルで再録音を試みたボサ・ノヴァの「主イエスのささやきを」でした。又、この録音と平行して夜には奈良のパンくず邸にて再び“PSALM”が集まり、「空の鳥よ野の花よ」を録音、更に「パラダイス」「主イエス....」のコーラス等をオーバーダビングしました。

 

 関西レコーディングは3日間に渡って行われましたが、最終日には“録音オフ会”と称して、20名ほどの方々が集まり、そして録音したのはやはり「たたえよ主を」のコーラスパートです。マイクの前に女性陣をかため、その後方に男性陣を立てることで女声をより大きく録る事に成功しました。この時、パンくず氏の愛娘=喜多ゆりさんもいらしており、女性陣に加わってもらいましたが、幼い声が加わることでトータルな意味で声質のバリエーションが驚くほどに広がりました。

 

 


【福山芳明&ひろみ夫妻との出会い】

 

 この「関西録音オフ」合唱録音の折り、あいかさんと共にいらして下さった「あの日のこと」の作者/演奏者である福山芳明&ひろみ夫妻と会うことが出来ました。福山夫妻はこの時既にZEDEK氏の手によって生まれ変わった「あの日のこと」のデモ演奏テープを聞いており、このCDに関して大変興味を持って下さって、出来る事なら是非とも曲を『UNITY!』に提供したいとおっしゃいました。しかし録音機材は持っておらず、自力ではひろみさんのボーカル録音をすることが出来ない、どのようにしたら正式にCDに参加出来るのか福山氏は困惑してらっしゃいました。私はそこで関西FLORDメンバー随一のオーディオ機材持ちのミルトス氏を呼び、先述したDATを使って地域の人が録音、そのテープを郵送してもらうという“民生用デジタルメディアを使う録音方法”を提案しました。

 


 

【「UNITY!」曲・ライヴ演奏】

 関西から戻った私は、直後に控えていたElpisの復活際コンサートのため、メンバーとリハーサルに入りました。このコンサートではクリスマスの時に自信を得たためか、ハイライトとして公演中盤に“UNITY!コーナー”を設け、Elpisの演奏で「主のもとへ帰ろう」、「タリタ・クミ」、「空の鳥よ野の花よ」、「主イエスのささやきを」、そして特別ゲストとしてたいぢ氏を呼び、氏の熱唱とElpisのサポートで「十字架の愛」を演奏しました。又、このコンサートではバンドの新曲としてパンくず氏と私で作った「きよきあさに」を初演しました。

 

 このコンサートの中で、私はこのCD製作のことについて詳しく触れました。そしてこの活動に賛同して下さる方はCDプレスのためのお金が必要なので、前金予約を受け付けています、と軽い気持ちでアナウンスしてみたところ、100名ほど入っていたお客さんのうち30名ほどの前金予約者が現れ、私達はその思わぬ反響の大きさに一同驚いたものです。

 


 

【ブラザー阿部(サンパウロ)との出会い】

 このコンサートに、たまたまサンパウロのブラザー阿部と親しいという方と出会い、このCDの件をブラザーに話してみてはどうか?と提案を受けましたが、私は以前の女子パウロ会のシスター白井がサンパウロへ行きなさい、MCDデモMDを送っておきます、とおっしゃっていたのをそのままにしていたため、これは良い機会だとサンパウロへ行くことにしました。基本的には今後の繋がりを持つためであり、又、MCDデモMDを回収し、ブラザーにお詫びするためでした。

 そしてその方と共にサンパウロを訪れた私はブラザー阿部とお会いし、このCDの製作上での様々な事情を話した上でご一緒に仕事をすることが出来ない事を伝えて、ご迷惑をかけた事をお詫びしました。それに対し、ブラザーからサンパウロでのCD製作の姿勢などを聞かせて頂きました。驚いた事にカトリックは賛美については柔軟そのものであり、あれこれ考えて選ぶより、実践して選択するという姿勢があることを知りました。そしてCDを製作する上では完全に“商品価値”を追求する方向があり、ブラザーは「これとこれのCDで歌ってる人はプロの歌手なんですが、信者じゃないんですよ」と教えて下さいました。そこにはCDというメディア、更には“音楽”というものに関して、歌う人の信仰が厚ければそれは誰にでも伝わるものとは限らない、CDは「音楽」を収録しているのだから、それが賛美であろうと恋歌であろうと、まず第一に「音楽」そのものを伝えられる人が歌うこと、そのあとは信者、未信者関係なくリスナーの受けとめ方に委ねるべきだという賛美CD哲学がありました。大いに勉強になりました。

 

 この一件もあり、又、コンサートでバンド用にアレンジした各曲は非常に美しく響いたこともあり、私は自ら主催するこのバンド=Elpis自体をCDの録音に参加させることにしました。Elpisは全員が信仰を持っている訳ではないのです。

 


【「あの日のこと」のボーカル・レコーディング】

 「あの日のこと」のボーカルレコーディングは、ミルトス氏のエンジニアリングによりゴールデンウィークの間を見計らって福山芳明邸で行われました。方法としては録音用のDATを用意し、ボーカルを右チャンネルに、ZEDEK氏による楽曲のオケのMIDIデータをパソコン(TOSHIBA Librett)+GM音源カードで再生した音を左チャンネルに振り分けて収録するといった寸法です。そして後日、送られてきたテープを私は聞き、全部で14ほどあったテイクの中から特に良かった4テイクを部分的につなぎ合わせ、ボーカルトラックを作りました。そしてオケを正式に録音し直し、エレキギターも自ら弾き、楽曲の録音を完了させたのです。

 


【収録曲のセレクト&スタジオワーク】

 1998年5月、私はこれまでの収録(録音)曲を見直し、更にこれから録音すべき曲を全曲リストアップしました。既にアレンジに手を付けている曲はアルバム2枚分にものぼり、その中からセレクトして1枚にまとめる作業を始めたのです。「UNITY!」はシリーズ化する構想が初めからあったため、上手に2分割して1枚ずつ時間差で出すという事も考えられました。私のアイディアは次の通りでした。

 

 

1.「UNITY!#1:オペラ構想」
【物語】

 サラリーマンとして社会生活を送るクリスチャンの青年が日々繰り返されるキリストの教えと矛盾した生活に疑問を持ちつつ生きる自分に悩み、“目指せパラダイス!”と歌い、自らにそう言い聞かせながらも、教会から離れて一人旅に出ます。

 各地を歩き回る青年はその都度、様々な人々に出会います。ビルの谷間で出会った女性は“私は信じる、あなたこそ私のただ一人の救い主”と歌い、夜の街でバスキング(路上演奏)していた若者は“あなたに慰められてばかりの道を僕は歩いてきたんだな”と歌い、海辺で出会った中年男性は“潮風の中で私は聞く、主イエスのささやきを”と歌い、大災害で瓦礫の街にたたずむ女性は“あなたの声に、呼んでくれていたことを知らずにいた、あの日....”と歌い、草原で賛美集会をしていた教会の若者達は“ハレルヤ賛美しよう、救われたら賛美しよう”と楽しく手拍子をして歌う。

 そういう姿に接して旅する青年は次第に心開かれていく中、山の上で一人嘆き悲しむ少女と出会い“どうして私はここにいるんだろう?”と歌う姿を見ます。そこで彼は心の扉が開かれ、“それでも私は永遠の時の中で貴女を見つめている”と主の言葉を歌い、少女を救います。それに気を良くした青年はその後、街角の路上でホームレスの親父さんを救おうと手を差し伸べてみます。しかしこの親父さんは“あぁ我が主の十字架の愛”と歌い、その人が使徒ペテロであることに青年は気が付くのです。ペテロは更に青年に“かつては闇を歩いて来たが、今はイエスの甦りにより希望の光を与えられた”と歌い、青年を説き伏せます。そして青年は自らの信仰は主によって強められ満たされると自覚し、社会生活を自分の信仰生活を尺度に推し量ろうとしていたことを省み、信仰は自らの内に、しかしそれをもって自分の外のものを裁いてはいけない、信仰は自らが生きる指標であり力である。そう気が付いた彼は喜びに溢れる自分を見てくれとばかりに“もう踊らずには、歌わずにはいられないこの喜び!”と高らかに歌います。

 様々な境遇にある人々の「証し」の歌を聞き、青年は再び教会へ、社会生活へと戻っていきます。そして最後に“主の歩まれた道を私も行こう”と告白し、幕を閉じます。

 

 このロードムービー的な“夢幻のオペラ”アルバム構想は、私がセレクトした楽曲の中で“個人の証し”の歌を集めたものです。コンセプトの発想としてはビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド」とザ・フーの「トミー」的なもので、最初に「序曲」を置くアイディアがありました。

 何故この構想を打ち立てる必要があったかと言えば、この時期にFLORDの会議室上で問題となった事のひとつにこの賛美CDは礼拝で実際に使える実用的なものを集めるべきだ、という意見が多数あったことが挙げられます。私としては私”(=個人)が大勢集まって“私達”となるだから個人的な証しの歌は各自が“個”の上で歌われる賛美であり、それを大勢で歌えば共同の賛美になるのだと考えていました。更に“私達”という日本語について、日本の企業システム的な個人の顔をボカしたとても無責任な匂いと意味あいを感じていたため、現在的な賛美の方向はこういった“個人の証し”も多く必要であろうと考えていたのです。が、それを説明し、メンバーの理解を得るより、とにかく世に問う方が正道だと感じていました。それ故それらを集め、CDとして聞いて面白いようにすることで必然性を与えて発表することを目論んだのです。

 私としてはこれが「UNITY!」の第二弾として発売されるように仕向けようと思っていました。つまり「UNITY!」が色々な可能性を秘め、フレキシビリティーに溢れた姿勢をもつプロジェクト・チームによって作られるシリーズだということをアピール出来れば、と思っていた訳です。価格設定は1000円強でいこうと考えていました。

 

2.「UNITY!#2:礼拝賛美集」
 

このアルバムは“実用賛美集”として、礼拝で用いられる楽曲をセレクトして並べるものです。純粋な意味で「賛美」をCDにした、“UNITY!”のスタンダード・フォームです。

 

 これには「空の鳥よ野の花よ」や「主のもとへ帰ろう」等の礼拝の中で賛美できる楽曲を集めるという趣向で作ろうというプランでした。こちらには収録楽曲のカラオケ付きで、CDを買った時からその場で賛美出来ます、というオマケ付きでした。FLORDの多くのメンバーにとってはこのスタイルが“賛美CD”のスタンダードタイプでしたので、こちらがあってこそ「UNITY!」は多くの教会にアピール出来るのではないか、という民主的な考えの下に構成していきました。そしてこちらを第一弾として発売、前金予約して下さっているリスナーをまず安心させた上で、意欲的な第二弾「オペラ・アルバム」を出すことを狙っていたのです。こちらも価格設定は1000円強と考えていました。つまり前金予約された方々には、この2枚をお送りするという事を考えていたわけです。

 

 

 ですがパンくず氏、Morrow氏と内密に相談し、その構想は面白いが資金的に2枚分同時製作は無理である上、どちらか片方を先に発売したとして、もしもコケた場合には両アルバムに分けて収録される沢山の素晴らしい賛美を広く知らしめることが出来なくなってしまう。特にコンサートやデモテープを聞いて前金予約して下さったリスナーの多くは、「十字架の愛」や「主イエスのささやきを」等を期待している事もあり、それ故その構想は直ぐに捨て、“手元にある素晴らしい賛美の数々をひとまとめにし、とにかく広く知らしめよう”という新しい考えの下、1枚のCDに出来る限りバリエーションに富んだ賛美を詰め込むことにしました。発想としてはビートルズの「ザ・ビートルズ(ホワイトアルバム)」的に転換したわけです。それはこのCDがシリーズ化の上での“第一弾”である為、かなり大出血サービスしていこう、そして確実にアテて第二弾へと繋げようではないか!ということがありました。これにより、確実にアテ(ヒットさせ)ようという意気込みがスタッフ全員にみなぎってきました。そして曲が決まったところで、私はアレンジとバック・オケの録音のため、自分のスタジオに1人こもりました。

 

 オケ録音には自分のスタジオを24時間フル稼働しました。機材的にも仕事ではそれまで使うことはしなかったステージ用機材まで動員して、出来る限り個々の機材の特性(得意な音色)を生かすようにし、尚且つ荘厳で広がりのあるトータルサウンドを心がけました。

 

 


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