■ UNITY! Project Supporting Web Site

■ メインメニュー
Project サポート
プロダクションノート
特別読み物
シークレットストーリーズ
UNITY! 楽器図鑑
歌詞カードの誤字修正
UNITY! リーフレット
MCDってなんですか?
プロデューサーからの言葉
Members Link
Home

■ サブメニュー

UNITY!の活動は1999年、AVACO小川清司記念・視聴覚教育奨励賞を受賞いたしました。

UNITY!_Project_Supporting_Website

プロダクションノーツ: プロデュース編 #8 

【なのはな工房被災・スタジオ設立】

 パンくず氏は1998年9月、長年の念願だったデジタル・ハードディスク・マルチトラック・レコーダー=ROLAND VS-1680(VS-880の上位機種)を購入しました。が、その直後、近畿地方を直撃した台風5号の被害で「なのはな工房」の一部が損傷するという憂き目にあってしまいました。しかしその後1カ月間で工房を再建、レコーディングのためのセットアップも完了させました。そして11月、工房で本格的にVS-1680を使用した『UNITY!』のレコーディングを開始したのです。この時はじめて、MCDプロジェクトは東京外でアルバムレコーディングが可能な環境を手にしたのでした。しかも同じメーカーの機種のため、録音した演奏はZipやMOディスクによって「データ」として交換することが出来るという理想的な形になったのです。

 

 東京の「Peter宮崎道スタジオ」にてVS-880で録音したオケの演奏はZipディスクに収録して郵送し、そのデータを「なのはな工房」でVS-1680に読み込んで氏は新たなパートを録音していく方法がとられたのですが、まず最初にパンくず氏は「こころのとびらをひらくと《うしマ〜ク!版》」に着手しました。この曲に関しては私の方からボーカルにパンくず氏の愛娘=喜多ゆりちゃんを起用を要請、楽譜を郵送して親子でレッスンし、パンくず氏(父親)自らエンジニアリングを行ってゆりちゃんの歌声を収録したものです。

 

 パンくず氏は続いて「パラダイス」のオーバーダビングに着手しました。この曲はこの時点でDD氏と私の手垢にまみれ(?!)、1990年代初頭に作曲され“PSALM”によって長らく演奏されてきたアレンジメントからはかなり離れたダンサブルな楽曲へと変身していました。この曲のサウンドを新たな理想に近づけて完成させるため、私は既に9月にパンくず氏本人に新たな演奏パートを依頼していたのです。ダビングされたのは従来はシンセサイザーによって演奏されていたエレキギターのパート、それから中間部の“パラダイス・アカペラ・シャウト”の部分です。

 ギターは当初、チャカチャカと16ビートのノリでキザむリズム・カッティングをお願いしていましたが、氏のこの曲に対する想いは強く、ディストーション・ギター2本、リズムギター1本の3パートを新たに追加しました。

 “パラダイス・アカペラ・シャウト”はこちらから要請したものです。丁度中間の“レゲエ風の間奏”の直前に入るそれは、「クィーンのように分厚く且つ爽やかなコーラスを」というコンセプトの下、パンくず氏は10パートに及ぶコーラスを一人で録音したのです。

 

 同時に氏は時間を割き、それまで悩みの種だった2曲「空の鳥よ野の花よ」と「主イエスのささやきを」の新たな録音に着手しました。特に「主イエスのささやきを」はパンくず氏が自ら歌ったバージョン、よい地氏バージョン、ミルトス氏バージョンと、このCD録音の過程で多くのテイクを残しましたが、それらは全て男性が歌ったものでした。パンくず氏はElpisが'97年クリスマスに行ったツアーの際、ミネストローネが歌ったライヴテイクを非常に気に入っており、しかも“PSALM”で奥様の喜多さつきさんをボーカルに立てていることから、この曲には実は女声ボーカリストを起用した方がしっくりくるのではないかと考えたようです。

 最新録音では“PSALM”のソプラノ=山口美佳さん(よい地 妻)を起用し、全てのパートを1から録音しなおして完成させました。そしてこの最新版が、それまでの数あるテイクの中で明らかに最高のものになっていました。この曲は伴奏の基になるアコースティック・ギター、ソロをとる2つ目のギター、クラベス、自作のウィンドチャイムをパンくず氏自ら演奏し、女声コーラスには山口美佳さん、喜多さつきさんの両名があたっています。よい地(山口睦夫)さんが今回は関わっていないため、このテイクは“PSALM”の演奏ではなく、パンくず氏のソロ・プロジェクトに“PSALM”のメンバーがゲスト的に関わるという形になっています。

 

 「空の鳥よ野の花よ」は氏によれば1997年7月に工房で録音したテイクは混成四部のハモり具合が悪く、それを改善したいという意向で再録音に挑んだそうです。伴奏のギターを2回(2本)ダビング、その後“PSALM”4人の歌声を個別に各々2回ずつ録音し、VS-1680内部のデジタル処理によって部分的な音程補正を施して完成させました。

 

 氏は今回のレコーディングにはじっくりと時間をかけ、納得いくまで集中して作業を行えたことで、やっと自分でも満足できるものを作ることができたようでした。その全ての演奏のデータを入れたZipディスクは後日私に手渡されることになります。

 


 

【ギター・パートの差し替え】

 私は8月21日と11月3日に、私の弟でありシンガーソングライター/ギタリストである宮崎 歩さんを呼び、ギター・パートの差し替えダビングをお願いしました。8月には「たたえよ主を」の、11月には「あなたばかりの」を行いましたが、かつて常に音楽活動を共にしていた実弟とのレコーディングは実に5年ぶりの事で、お互いに大変楽しみました。宮崎 歩さんを起用したのは「たたえよ主を」でのエレキ・ギター・パートを強力にしたかったのがそもそもの始まりでした。「たたえよ主を」には元々、「オーヴァーチュア:“Access To The Lord”」と同じ、私がプログラミングしたシンセサイザー・ディストーションギターが入っていましたが、私はそれに満足出来なかったのです。エンディングでは大勢の声が合唱するこの曲に於いて、ギターにはラフな人間臭さが必要だったのです。

 

 歩さんは「たたえよ主を」のギターパートについて事前に「ギターはどんなサウンドが良いだろうか?」と相談して下さり、私は「ソリッドでパワーのあるディストーションサウンドが欲しい、ギターはレスポールではどうだろうか?」と要求しました。それに応え、歩さんは使用するギターを選択してきたのですが、80年代ハードロック系では人気だったHamerのストラト・タイプのギター=“Mirage”を選び、ディストーション・エフェクト用にとKORG TONEWORKS“PANDORA”を持ってきました。彼曰く「自分のレコーディングでこのコンビを使ってエンジニアには大評判だった」とのこと。実際、要求したソリッドでパワーのあるギターサウンドを出して下さり、それをVS-880に私は丁寧に収めていきました。“PANDORA”は同系統のVS-880に内蔵されたエフェクトボード“VSP-8”よりもギター・アンプ系のデジタル・シュミレーションが良くできているようで、そのサウンドに私は満足しました。

 

 「あなたばかりの」は11月、私がオーバーダビングに取りかかる時点で問題点が発覚したため、急遽宮崎 歩さんに再登場願ったのです。作者であるマン太郎くん自身のギターの“演奏上”では何の問題も無かったのですが、チューニングと、使用したギターの状態に問題があったのです。ネックはかなり反っているようでした。オープンな状態ではA=440Hz程度で良かったのですが、押さえるポジションによってはチェックしたところ、A=436〜444Hzまで変化してしまい、別の楽器のオーバーダビングは事実上不可能だったのです。ところがマン太郎くんのボーカル・チューニングを調べてみたところ、A=440Hz当たりが平均値であることが分かりました。マン太郎くんの歌はレコーディングではかなり不安定な感じは否めませんが、非常に音感の優れた人であったため、無意識的に440Hzの音程感を取っていたのでしょう。それ故、歩さんのOvation Guitarのチューニングは通常通りA=440Hzにしてもらい、“差し替え”てもらいました。この曲はマン太郎くん自身が気持ちよく歌ってもらえるよう、クリック(メトロノーム)を使わずに録音したものでしたので、歩さんはマン太郎くんのギター・パートを聞きながら、それに合わせる形で録音していったのです。

 

 ここでも歩さんはピックアップ内蔵のエレクトリック・アコースティック・ギターの草分け=Ovationのギターに対し「ラインで録るのなら....」と再び“PANDORA”を持参、コンプレッサー+イコライザーで音を作り、そのままVS-880に収録していきました。この音色はミックス時にはほとんどイコライジングしなくて良いほど完成されたものでした。

 

 しかし録音はまだまだ残っていました。しかし私にはそれを続行していける時間がありませんでした。基本的に仕事に追われていたのは事実でしたが、更にElpisのクリスマス・コンサート・ツアーが始まってしまう事もありました。そのツアーの初日は、この『UNITY!』と密接な関係がある公演でありました。

 

 


【「UNITY!」発売直前プレビュー・ライヴ in 名古屋】

 Elpisの「ヤァ!クリスマス・コンサート・ツアー'98」は11/29、名古屋の日本福音ルーテル恵教会からスタートしたのですが、この恵教会にElpisを紹介して下さったのはそもそもMorrow氏でした。ですがそもそもは『UNITY!』製作の件から話が広がり、私達に何度もラブコールを送ってクリスマスに呼んで下さったという経緯から考え、私はバンドメンバーに無理を言って特別なプログラムを組むことにしました。第一部がElpisの“クリスマスコンサート”、第二部が“UNITY!プレ・ライヴ”です。このコンサートのため、私はまず奈良のパンくず氏にコンタクトを取り、パンくず氏は兵庫の谷渕和子さん、大阪の斎藤洋三さん、ご自身のグループ“PSALM”のメンバーにも声をかけて下さいましたが、年の瀬で多忙の中、パンくず氏と谷渕さんは参加を了承して下さいました。

 

 そうして1998年11/29(降臨節第一主日)、ルーテル恵教会の信徒さんたちの全面的なバックアップによって『UNITY!』のプレ・ライヴは実現しました。このライヴでは正に公に初公開/初演であった「オーヴァーチュア:“Access To The Lord”」に始まり、「Tell Me The Way」、「空の鳥よ野の花よ」、「パラダイス」、「主イエスのささやきを」といったパンくず氏のナンバー、「十字架の愛」、「たたえよ主を」といったZEDEK氏のナンバー、子羊の群れ教会の「主のもとへ帰ろう」、そして「きよきあさに」の9曲を披露したのです。特に「Tell Me The Way」はCDと同じ谷渕さんのボーカルにより、「パラダイス」と「きよきあさに」は奇しくも作者本人の自作自演という形でのお披露目となりました。

 そしてこの日、私は「なのはな工房」で録音された演奏のデータの入ったZipディスクを、パンくず氏より受け取ったのです。

 


【CCMC/"UNITY!"ホームページ開設】

 この頃、ZEDEK氏は自らのNIFTY-Serve会員特典を使い、NIFTYのサーバーにホームページを開設しました。“Cyberspace Christian Music Club”(略称:CCMC)として立ち上がったホームページの一画に公式な『UNITY!』のページを設け、ここから様々な情報を発信しようという計画です。

 

 そもそもこの計画は1997年当初からZEDEK氏と私を中心としてFLORDの会議室上でも討議されてきたことであり、実際にそのホームページのテスト版をZEDEK氏は'97年に一度開設しています。それは当時は“サイバースペースにインディーズ・レコード・レーベルを立ち上げて販売する”という考えによるものでした。結果的にインディーズレーベル構想は消えたため、CDパッケージには添付できない膨大な『UNITY!』に関する情報を発信するインフォメーション・ステーションという形に落ちついたわけです。

 ホームページのデザインは全てZEDEK氏が独自に行い、様々な情報はスタッフから集めるという形で進められ、現在も頻繁に内容が更新されています。

 


【ブックレット製作班】

 こうして私達、音楽製作のチームがコンサートに出ている間、FLORDではジャケット/歌詞カードを含めたブックレットを製作する班が立ち上がり、テキストをまとめ始めました。このテキストをまとめる役を買って出たのは埼玉県に住むmickeyさんでした。mickeyさんは私が指示したページレイアウトを元に、テキストデータ化された歌詞を整理、Morrow氏と私が書いた序文や、プレイヤーズクレジットなどをページ毎にまとめて下さいました。

 Adobe Illustratorによる正式な印刷製版データ用のDTP作業は、当初、 FLORDメンバーで行う予定でしたが、結局、広告代理店勤務のMorrow氏の協力 スタッフに依頼することになりました。そうしてレイアウトされた原稿はその都度Adobe Acrobat Readerで読み込めるPDFファイルに変換、Morrow氏の非公式ホームページ上でスタッフが各々見てチェックし、校正していく方法が取られました。全国に散らばっている私達製作スタッフは、この時点でNIFTY-Serveの「ハレルヤ・ハレルヤ」(FLORD)という枠を飛び越え、インターネットという“巨大なサイバースペース”を会議の場として使うことにまで発展していました。

 


【それでも私はここにいる】

 さて、ツアーの最中の11/7、私は長らくの友人である香奈乃 昏麗(宮川朝子)さんを招き、日本聖公会・池袋聖公会の聖堂をお借りしてZEDEK氏作の「わたしはここにいる」のボーカル録りを行いました。この曲は私個人としては大事にしたい1曲であり、アルバム中でも思い入れの深い1曲でした。それ故ひとつのイメージがあり、それにピッタリくるのは香奈乃 昏麗さんの“か弱い”歌声だったのです。

 

 この曲はZEDEK氏の作品ですが「たたえよ主を」以上にかなり手を入れた作品です。原曲にはない展開部を作曲し、プログレッシヴ・ロックのようにドラマチックに盛り上がるように構成したのは、この曲がそもそもZEDEK氏作曲のミュージカルの中の1曲だということに起因します。繋がりの中で意味を持つものを単体として取り上げた時、そこには本来あったハズの前後の繋がりが無いために歌詞の意味が希薄になってしまうので、この曲が“自立”するためにはそもそもの演劇的効果から離れて純粋に音楽的効果によらなければダメだと考えました。そのため本来はこの歌は“神”と“私”の2重唱のハズですが、敢えて一人の“私”にのみ歌わせることにしました。それにより、多少文法的には曖昧な部分もありますが、「個人の自立」の歌にすることが出来たと思います。

 


ページをめくる(プロダクション・ノーツ#9へ)


Copyright (c) CCMC. All Rights Reserved.